清武管理栄養士から



『博多雑煮』は“焼きあごだし”

                     管理栄養士 清武 泰子            
                      (更新 2012 2 1)

 新しい年が始まりました。
 「かんぶつ」も登場するお正月料理ですが、今年も何とか無事作って家族で新年を祝うことができました。
 また、田舎の本家である我が家では、親戚が一堂に集まり宴があります。
 年末、友人や知人の集まりがちょこちょこあり、お正月料理の話が出ました。

 私のように本家の嫁もいれば核家族の人もいましたが、お正月料理はもう家庭で作るものではなく、料理屋さんから取り寄せる時代になったのか…と考えさせられる位手作り派はいませんでした。私は「ねぇ、手作りするの? おいしいレシピない?」と聞きましたが、みんなは「どこかおいしい店 知らない?」と聞き、あそこがおいしい、ここがおいしいと情報交換になるのです。
 私の姑は高齢になっても手作りしていましたが、その年になっていないこの私でもやっぱり「正月、手作り、大変…。」と思いますから、みんなの気持ちも理解できますけどね…。

 親戚の集まる日は、我が家も数年前からすしとフライドチキンだけはお決まりの店から買いますが、その他は、まだ全部手作り。
 博多雑煮(具がい~っぱい入りますヨ。)がめ煮、黒豆、数の子、かぶの酢漬、きんとん、なます、照り焼き、卵焼、焼豚、等々…。毎年決まった物に、その時の材料でできる物を加えたりします。
 正月が近くなると、自分を奮い立たせて『さあ、お正月が来るよ!!。しっかりやらなきゃ!!』とよくよく言い聞かせておかないと、生半可では失敗するし、何でも中途半端になって逆に手間がかかって疲れてしまうのです。

中でも正月の「かんぶつ」イコール「黒豆」作りは、1年に1度のビックイベント。豆を洗うところから3~4日かかる作業は気が抜けません。
でも、しわも寄らずやわらかく、黒くつやつやした黒豆が炊き上がると、もう、至上の喜び!。ひとり悦に入ろうというものです。
家族は、この黒豆と博多雑煮を、我が家の自慢のお正月料理と言ってくれて、「この2品がなかったらお正月じゃないね」とも言ってくれます。若い頃は苦になっていたお正月料理も、家族がそう思ってくれるなら作らなきゃねぇ。

博多雑煮のだしは「焼きあごだし」と決っています。私は、ここ数年、年末に長崎で行なわれる「水産加工振興祭」の会場で買い求めています。
昨年末は、私の前に並んだ年配の女性が数万円分を買い求めておられ、私の分がなくなっちゃうんじゃ…と心配しました。遠く東京に住む息子さんにも送られるとか。うどんやみそ汁も焼きあごだしを使っておられるそうで、「送ってネ」の一言で、母は寒風吹きすさぶ会場に足を運び、山のような焼あごを宅配に出しておられました。

インスタントのだし等、手軽な物が安くてたくさんあるのに、東京に居て焼きあごだしのみそ汁を頂く…。これこそが伝承です。
本当においしい味を、舌が知っている。どこに居てもそのおいしいものを食べ続けたい。息子さんも偉いが、母はもっと偉い。そして、もっともっと偉いのは、嫁かも知れない。
「かんぶつ」はこうして代々伝えていかねば、すぐに途絶えてしまう食文化になってしまうのでは?と思います。

私も姑が亡くなり、台所を好きにできるようになった時、正月料理は「もう辞める。料理屋から取る。」と言えなくもなかったかもしれないけど、家族が「お母さんの雑煮と黒豆がなきゃね」と楽しみにしてくれたら3~4日かかって黒豆も炊きます。
舌が覚えてくれるまで、繰返し、繰返し、昔の人達がそうしてきたように守り続けていく事が大切なのでしょうね。

皆さん、自慢の正月料理、伝えておきたい一品、これは私に任せてよ…の「かんぶつ」料理は何ですか?。



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