乾物の知識



干瓢

解説 夕顔の果肉を乾製したもの。その匏(ふくべ・実)を成熟最中に採って、真白い果肉を薄く剥き取り、あたかもリボンのように架に掛け、晒しながら乾し上げたもの。往昔(大昔)は山城の木津(きづ)が名産地と謳われ(大阪の玄人筋は今でも「かんぴょう」を「きづ」と呼ぶ)、江州、播州、大和、備前など、関西地方の特産物として関東へ移出したものですが、現今は全く昔と反対で関東の栃木、茨城両県が大産地となり、全国の需給を左右するほど名声を馳せています。
新品は初夏6月から出回るも初期製品は貯蔵に適せず、7~8月の交(頃)に至り良質の製品が現れます。その品位は天候に左右され易く、産地では組合検査を行い、長さ7尺5寸を標準とし、特等から5等までの等級を設け不合格品の県外搬出を禁じていますが、そのうち「本囲」というは最も優良な製品で、1年間の貯蔵に適し1等品に当るもの。次に「造落」というのは本囲の製造中に次品に落とされたもの。「引切」というは果肉の肌、皮部を剥いだもの、いわば劣等品を指します。

成分及び栄養価 剥いだ果肉は、乾燥によって特異の甘味を帯びてきます。その成分は含水炭素(炭水化物)65.35%を占め、蛋白質6.22%、脂肪1.07%、灰分13.56%、利尿、解毒の効あり、特に肥り過ぎの婦人の好食品だといわれます。

用い方 ぬるま湯に暫らく浸し、ざっと洗ってから鰹節出汁などで味を付け、ちらし寿司や巻鮨に多く用いますが、料理法はいろいろあって、その方法一つで立派に栄養的な御惣菜となります。下記は栃木県干瓢商同業組合で懸賞募集した料理法です。なお産地宇都宮では干瓢で作った銘菓を売っています。

調 理 例

1.干瓢の卵とじ(五人前)
材 料 干瓢4~5本、玉子1個或いは2個、煮出し汁5合、醤油
調理法 干瓢を洗い2,3分の長さに切り、卵をといた中に入れてかきまぜる。別に煮出汁を鍋に入れて火にかけ煮立ちたる時、前の材料を入れ6~7分ぐらい煮て後醤油を入れ、再び煮立つを待って下ろします。これに三つ葉等を交ぜると美味しく頂けます。

2.味噌汁
材 料 干瓢(3匁・約11.25g)、味噌(50匁・約187.5g)、水(5合)、鰹節(少々)
調理法 干瓢を洗って2~3分の長さに切り、水5合の中に入れて火にかける、煮立ってから5分程煮て、後味噌を入れ再び煮立ててから下ろす際に鰹節を入れます。(備考、味噌は長く煮ない方が風味がよいようです)

3.清汁
調理法 味噌汁の場合と同様、ただ味噌の代わりに塩で味をつける、醤油で色をつけるだけです。

4.煮〆
材 料 干瓢(100匁・約375g)、油揚(10枚)、煮出し汁(6合)、砂糖(60匁・約225g)、醤油(2合)

調理法 まず干瓢を水にひたして、もみながら洗い、5分位の長さに切る、油揚は初めに縦二つ切りとし、更に横に一口より細く刻み、一寸(ちょっと)熱湯にくぐらせて笊に取ります。干瓢と油揚を鍋に入れ煮出汁6合程加えて火にかけ、煮立ちたる所へ砂糖60匁、醤油2合を加え10分乃至15分間煮たてます。(備考、油揚のかわりに茸類、えび、里芋等と煮込むもよろしい)

5.干瓢の胡麻和え
調理法 干瓢を洗い、2~3分の長さに切り、鍋に入れ煮出汁を加えて煮ます。砂糖、醤油にて味をつけ(幾分薄味にて可)、下ろしてそのまま冷まし置く、一方黒胡麻を擂鉢で丁寧に擂り、砂糖塩少々加えて干瓢と和えるのです。柚子和は柚子をおろし金で摺りおろし干瓢を加えるとよい。

6.干瓢のわかさぎ巻
調理法 わかさぎ1尾づつを尾の方から頭の方にと干瓢を巻き、次に横に巻いて、最後に頭の輪になった部分に干瓢の終わりを通して引くと昆布巻きのような形になります。干瓢10本で25尾位まけましょう。

7.五月のたね
調理法 干瓢を洗って3分ぐらいの長さに切り、煮しめの場合より幾分きつく味つけをする。煮冷ましてから椎茸、蓮根、油揚げ、生姜等とともに米飯にまぜます。(備考 干瓢は始めから切らずにに味つけをし、さめてから切っても同じことです。)

8.干瓢の三杯酢
調理法 干瓢を洗い2.3分の長さに切る。一方三杯酢(砂糖、醤油、酢を同じ分量ずつまぜあわせる)をつくり、この中に干瓢を3.4時間つけておき後食す。

9.乳母のお土産
材 料 干瓢、人参、薩摩芋、切昆布、蓮根、椎茸、牛蒡、油揚(所要の枚数)
調理法 前掲の材料をこまかに切り、油揚だけは二つに切ってザッと下煮をなし、油揚を袋型として下煮をした色々のものを7.8分目につけ込み、長い干瓢(これも下煮する時一緒に煮て置きます)を幾重にも帯の如くまく、それを醤油、砂糖適宜の味に煮出しをまぜて煮込みます。客膳には2.3個づつお皿にのせて出します。一見油揚と干瓢のようですが、中から種々のものが出ておいしく戴けます。(生沼一翁氏)

10.ぎせい豆腐
材 料 干瓢、豆腐、牛蒡、椎茸、生姜
調理法 先ず豆腐を茹で布巾でしぼり、別に牛蒡、椎茸等をこまかにきざみて砂糖、醤油、味醂、煮出し汁と味よく煮付け、卵を解いてよくかき混ぜ、卵焼きと同様の方法をもって焼き上げる、お弁当のお菜、お酒の肴に結構なものです。但し、生姜は干瓢の味をよくするために入れるのですから極少々にてよろしい(同上)
 ◎干瓢を柔かくするには、水に浸し、塩でもんでから水で洗うがよい。
 ◎新干瓢はあまり長く水や湯に浸すと、その甘味を失うから注意なさい。
 ◎干瓢にカビの生えたものは、塩でもんで水で洗うと綺麗になります。



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