乾物よもやま



「乾物」と「干物」について

 「かんぶつ」については、2通りの表記がある。「乾物」と「干物」である。このことについて、昭和56年2月から34回にわたって食品業界専門紙「食品新聞」に連載された「乾物誌」の筆者・藤田留三(ふじた とめぞう)氏(当時・花菱乾物㈱代表取締役会長)が、昭和52年2月4日付同紙掲載の第2回「乾物食品と食生活の変化」(2)に次のように記載している。
 「保存食品たる乾物食品とは、何ぞや――について説明しておこう。乾物とは、食料品を分類した一名詞であるが、たまたま「干物」の文字を用いるものもある。「乾」と「干」は同じく「かん」と読むが、品種は相異なるのである。「乾物」食用の植物を乾燥(素乾=すぼし)させた物であり、また「干物」とは魚や貝類を塩をして干したもので、一名「塩干」というものである。ところが「乾物」と「干物」が混用せられ、世間一般、この両者区別が判然とせず、混同され、また同一視されているが、即ち「乾物」と言えば「植物製品」であり、「干物」とは魚、貝類を塩をして乾燥したものをいうのである。従って製造方法も用途もまた異なるのである。」
 また、昭和6年11月に大阪乾物商同業組合から発行された、「乾物の知識-その栄養価と調理法」によると
 「乾物とは食料品の一分類でありますけれども、土地々の習慣や事情によって商舗の扱い品が違いますので、確かな範囲を定め難く、一々品種をあげることも困難でありますが、普通いい慣(なら)わしているところは『惣菜、果実、菌茸(きんたけ)、穀豆類、海藻類、小魚類(こうおるい)などの素乾したもの、これに加工又は味付けしたもの、各種の穀粉類およびその加工品など、すべて生ものを乾燥又は加工して、貯蔵に耐えるようにした食料品』をいうので、このほか土地によっては塩干魚の一部(かつお節、削り節)、鶏卵まどをこの分類に加えて、取り扱うのが多いのであります。なお極簡単(ごくかんたん)に食料品中の『植物製品の乾燥又はかこうしたもの』と称するのも、あえて不当ではありますまい。
 従って、乾物類の語を広義に解すると、狭義に解するとで、その品種の範囲に大分差異を生じる訳でありますが、・・・」としている。
 「乾物」と漢字で表現するより「かんぶつ」と日本特有の文字表記にした方がよさそうである。



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