清武管理栄養士から



「かんぶつ」の手軽な利用法が普及のカギ

                             
                        管理栄養士 清武 泰子
                       (2012.2.27・更新)

 今年は寒さが厳しく、買い物に出るのも億劫(おっくう)で、夕食の仕度に取りかかる頃になって「晩ご飯何にしょ…。今から買い物に行くとまっ暗になっちゃうし…。」なんて日も多々あり…。
 皆様、栄養士の食生活に対する取組は、計画的でかつ栄養バランスももちろん良く、同じメニューなんてあまり出てこないのでは?なんて想像しておられるかもしれませんが、私のようなぐうたら栄養士がいる訳で、栄養士の皆さんごめんなさい!。
 我が家は、福岡市の中心・天神まで車をぶっ飛ばせば1時間足らず、とても便利な場所に位置していながら、ナント!! 周囲3キロ以内にはバスも通らず電車駅はさらに遠く、最寄の駅やスーパーマーケットまでの交通手段は、運転免許と車がなければ歩くか自転車しかないという、便利そうで不便な田舎なのです。一番近いスーパーまで歩いて30分、年をとり免許を返上したら買い物や病院に行くにもタクシーという事になります。
 この地区の人達は皆、車を持ち、一軒の家には大人の人数分の車があるという土地柄です。農家は一人1台どころか2~3台の車を所有しておられます。お出かけ用、田んぼ用、出荷用と言ったぐあいです。

 前置きが長くなり、いったい、この「かんぶつ」のコーナーと何の関係が?とお思いでしょう。
 このような地域の環境から毎日ちょっと買い物に、という訳にはなかなかいかないのです。ましてや私のように暗くなっても、まだメニューが決っていない主婦を救ってくれるのが、実は「かんぶつ」なのです。
 保存がきき常備できる食品「かんぶつ」にずいぶん助けられています。
 
 うどん、そうめん、そば、スパゲティ、はるさめ、粉類、のり、わかめ、昆布、かつお節、いりこ(煮干)、干し椎茸、木耳(きくらげ)、大豆、金時豆、小豆、ひじき、切干大根、凍り豆腐、ごま……等々。
 災害で2~3日で食べ物がなくなり、早く救援物資を、というニュースをテレビで見ていた息子が、「うちは孤立しても一ヶ月は食いつなげるね」と言いましたが、その通り。畑に行けば週末ファーマーの夫が作る野菜もありますしね。

 薄暗くなってメニューが決らない時、食品棚をあさると「おっ! これしばらく使ってないジャン! 今晩これ使お! 」と、創造性をかき立てる食品がひとつふたつ位出てくるのです。ですが、何せ、時間も押してる訳でして、料理本の「かんぶつの戻し方」なんてのを真似していたら夕飯に間に合わない私は、すべて自己流。ぬるま湯にひとつまみの砂糖を入れて干し椎茸を戻せば良かでしょうけど、それじゃ間に合わん。
 「しいたけが戻って食べられたら良かろうもん!」てな発想で、ぐらぐらふっとうした湯の中に砕いてポンと入れ、数分もしたら戻って、もどし汁ごと利用する…なんて調子です。
 一晩水につけて戻す-なんて学生の時習いましたが、明日の夕食のために今晩水につけて……なんて計画性のない私には無理。そんな事するのは、正月雑煮用の水だしの時位かなぁ…。

 ぐうたらからこんな事やっている私ですが…、でもね、最近若いお嫁さんと話す機会がありました。彼女、干し椎茸もらったけど、戻すのやった事ないし、めんどうそうだし、使い道がわからないから捨てたと!? そう、そうなんです。「かんぶつ」を戻すという作業が、人を遠ざけているんですね。
 私は自分のやり方は正式なやり方じゃない自己流だから、人に言うのは恥ずかしいと思っていました。でも窮地に追い込まれると何とか凌ごうと別の発想が浮かびます。
 一晩水につけて戻した椎茸はおいしい物でしょうが、ぐらぐらポンの私のやり方だってそれはそれでウマい。体の中に入ってしまえば栄養価もさほど変わるまい。使わず劣化させてしまうより、使った方がいいよネ、てなもんで若嫁に教えたら「えっ!それで食べられんですか? 長時間水につけとかないと石みたいに固くて食べられないかと思った……。」
 うちの若嫁ではないけれど、こんな方法でも干し椎茸をポイせず使ってくれるようになったらありがたいな。

 生より乾燥させる事で栄養価もぎゅーっと濃縮されるかんぶつ。その土地に独自のかんぶつもいっぱいあります。黒豆や干しタラのように長時間水につけて戻す食品もありますが、ちょっとした工夫で、すぐ食べられる物もあります。
 もっと手軽に使う方法やおいしい料理法が伝われば、かんぶつは次の世代に伝わる食材として残っていくはず! と信じ、いつもよりはちょいと早めに干し椎茸を水につける私です。



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