1、素麺の辛し和え
調理法 素麺は前記の如く茹でたものを笊に上げて水を切り、夏になれば氷を加えて冷やし置き、傍ら灰汁を抜きたる芥子を擂鉢でよく摺り、その中に煮出汁(少し甘くするためA1升対B4升ないし5升の割合)または調味料Aのみを混入し、その中へ素麺を移してよく和えるのです、素麺に芥子汁を適宜にかけてもよろし。この芥子和えは四季共に酒の肴に喜ばれますが、夏などに御飯と共に食べる時は食欲を進めて非常に良いものです。
2、涼しい酢素麺
調理法 素麺は清水に冷やし置き、傍らよい酢と醤油と砂糖を適量に加えたるものを小さなコップに入れ、冷やし麺の如くにして食べるのです。但し酢は少ない方がよろしい。その中へ味醂又は調味料を加えると申し分がありません。
3、おいしい煮込素麺
調理法 素麺は例の如く茹で置き、一方調味料A1にB4の割合で調合して、椎茸蒲鉾等を加えて熱い煮出汁となし、素麺も熱く温めてそれぞれ器に盛り分け、煮出汁を適宜にかけて召し上がればよい、又煮出汁の中へ素麺を入れて、共に暖めて召し上がるのは一番手軽です。
其の他牛肉又は鶏肉魚肉をダシに調味して食するのは、最も美味しい素麺の調理法で、鯛麺もその一つです。
4、村 雲
調理法 素麺を茹でて冷やしたものを三杯酢の中へ浸し、よく三杯酢の味を加えて皿に盛り、味噌を良く摺りて砂糖と酢にてドロドロになる程度に溶かし、之を素麺にかけて食べます。
5、海 苔 巻
調理法 素麺を把(たま)のまま4、5箇所括って茹で水に冷やし、一方浅草海苔を焙って、十分水を切った素麺の把(たま)を解きて海苔にて巻き(巻すしと同様に)之を適宜に切り、三杯酢の中へ柚子を山葵おろしにておろし、前記素麺に付けて食べます。(以上播州素麺同業組合)
6、冷やし素麺
材 料 (5人前)素麺2把半、枝豆10莢(さや)、錦糸玉子2個分、茗荷(みようが)の子1個、巴旦杏(はたんきょう:すもも)1個
調理法 先ず素麺は茹でて水洗いし、冷やして置き、玉子は塩砂糖で味を付け、薄焼きとし出来るだけ細かく切ります、茗荷は縦に千切にして水に浸して置きます、巴旦杏(すももの事)皮をむいて二つに割り種をとり、それを縦に細かく切ります、枝豆は少し辛めな塩水に通して青く茹でます。
その盛り方は大皿或いはガラス器の涼しそうなものを選び、これへ素麺を盛り、それが浸るほどの水を入れ、錦糸玉子、枝豆、みょうが、 巴旦杏を上に綺麗に並べ、その儘(まま)かけ汁(ソバツユ)を添えて供します。
7、氷 素 麺
材 料 茹でた素麺、寒天、柚子
調理法 これは素麺の流し物です。寒天1本を水1合半の見当でよく煮溶かし、塩少々と砂糖少々を入れて味をつけます。流し箱に茹でた素麺を並べ、よくのばして線香のようにし、その上から熱い寒天を流し込んで、箸で寒天が素麺の中に行き渡るようにします。1時間もしますと固まり、それを箱から出して適宜の大きさに切ります。三つ位を皿にのせ、横に切目を見せるようにして合わせます。お汁は甘辛に作って冷やしておき、食べる時に別の器に入れて出します。素麺の上には青柚子を山葵おろしで下ろしてバラバラとかけて出します。
8、鰌 素 麺
材 料 鰌30匁、素麺30匁、味噌30匁、牛蒡30匁(3人前)
調理法 牛蒡は笹掻(ささがき)にし、ざっと茹でて置き、素麺は熱湯に投じて程よく茹でて水に晒し、鰌は煮え立った酒に入れ、暫時煮て、3合の煮出汁を入れ、味噌を加え、これが煮溶けた時牛蒡を入れ、暫らく煮て素麺を入れ、更に煮立ててから下ろします。(注意、鰌は小さいものがよろしい。粒味噌を摺り煮出汁でユルメると味良くなる、香味を添えるため柚子又は山椒を用いると結構である。)
9、頬落とし(1名滋養汁麺)
材 料 鰌160匁、素麺100匁、醤油若干
調理法 鰌は2,3日中水に生けて泥を吐かし、鍋に入れ、約1升の水で十分煮た後、穴杓子で鰌を掬い上げ、適宜に味を付け、ゆで素麺を入れ、一度煮立てます。前の鰌は適当の味をつけ添え肴とします。(以上二種は琵琶湖魚研究会)
10、鶏 素 麺
材 料 茹でた素麺、鶏のひき肉、味醂、酒、葱、生姜
調理法 鶏のひき肉100匁を味醂と酒でバラバラに煎り、煎鶏にしておきます。素麺は茹でたものを煮汁の中で一寸煮てお碗に盛り、煎鶏を上からのせ、さらし葱の小口切りと生姜汁とをかけて熱いうちにすすめます。
別法には、鶏の骨を身ごとブツ切りにして二時間位スープを取るようにして煮ます、味が十分出ましたら汁を布巾で漉し塩、醤油で味をつけ、その中に茹でた素麺を入れて一寸温め、お碗に盛って、骨付肉を二切位に木の芽か粉山椒などをふりかけます。
11、シシリー風の素麺料理
材 料 素麺125グラム(33匁)、トマトクリーム75グラム(20匁)、牛肉75グラム(20匁)、チーズ30グラム(8匁)、バター30グラム(8匁)、茄子5個、玉ねぎ、塩、胡椒、味の素適宜、サラダ油、メリケン粉少量
調理法 茄子を二分位の輪切りにして塩を淡く(うすく)ふって、そのまま1時間もおき、水気をふきとり、メリケン粉をまぶして油で柔かくなるまで揚げます。熱湯に塩、胡椒を入れて素麺をゆでて笊にあげ水気を切って置きます。牛肉は小さく刻み塩、胡椒をふりメリケン粉をまぶしておきます。玉ねぎをみじんに刻み、フライパンに入れ、バターを加えて良い香りの出るまで気長くいためて後、前の牛肉を入れ5分間いため熱湯に2合を注し、塩、胡椒をして30分間位とろ火でとっぷりと煮つづけました後、この中に前の素麺を入れて軽くまぜ合せ、塩、胡椒、味の素で再び味をつけ、パイ皿にバターを敷き、この中に前の混合物を盛り、その上に揚げ茄子をおき、おろしチーズをふりかけ、バターをところどころにのせ天火に入れ中に火が透るまで焼きます。(東左興子氏)