乾物の知識



辛味料三種(しんみりょう)

解 説 近頃は、わが国固有のもののほか、西洋辛味料がいろいろ用いられますが、ここは乾物商の取扱う3品につき記します。
蕃 椒 粉(とうがらしこ) 即ち唐辛子または南蛮粉。茄子科の草本。その實を乾燥して粉末に精製したもの、粗製品には糠(ぬか)を混じるといいます。七味唐辛子というのは陳皮、山椒、肉桂、胡麻、麻仁を適合したものです。
山椒粉(さんしょうこ) ハジカミ科の落葉潅木(らくようかんぼく)。その若葉は初夏に摘み取って「木の芽」と称して佳香(かこう)を賞しますが、山椒粉はその實を乾して粉末に精製したもの、種子を混ぜたものは粗悪品です。
芥子粉(からしこ)純粋な芥子粉は芥子の實を粉末としたものですが、それではあまり辛らつ過ぎるので、その實から油分を搾取した粕を粉末といたします。
 しかして前記3品とも各地で製造されますが、大阪では大規模の工場において生産が行われ、かつ優秀な製品を提供しています。就中(なかんずく)、大彌(だいや)、新興等(しんよとう)の商標品には定評があります。
成分及び栄養価 香辛料は概して欧米人や支那人、朝鮮人の方が多量に用いるようです。日本の家庭でも欧米人や支那人のほどではないが古くから用い、料理上欠くべからざるものとなっています。香辛料の役目は、その特殊の香味又は辛味によって神経を刺激し、食欲を増進し、消化を助けるにある、そしてそれぞれに含有する組成分により身体の一般的生理機能を促進する作用をなすので、食用上ナカナカ侮るべからざる価値があるといはれます。勿論、大量はいけませんが、少量づつ用いるのは生理上有効だと思います、その成分を掲げると
品名水分蛋白質脂肪炭水化物灰分カロリー(グラム)
辛子(黒)7.5729.11揮発0.87不揮発27.2819.2315.944.60
辛子(白)7.1827.5929.6620.8314.744.74
辛子(朱)5.6332.55揮発0.64不揮発32.2118.7510.425.16
蕃椒12.4213.43揮発1.58脂肪14.4034.4925.263.45

 右のうち蕃椒(とうがらし)の辛烈味はそれに含む一種の硫黄化合物に因るとせられ、山椒實の舌頭における特殊のピリ付方は、よく味覚神経を覚醒し、芥子粉は解熱および精力刺激の効が多いようです。
 ◎昏睡には芥子粉を練って足の裏に塗るとよく、腹痛の時は患部に塗るとよい。
 ◎芥子は赤痢止、脚気衝心の薬品を作る原料となる。
 ◎支那では婦人の閨房を淑房と稱し(称し)障壁に山椒の粉を塗りこめる習慣がある。これは山椒は濕り(湿り)を除いて温むる故に、婦人の衛生にもというのであらう、云々(野菜百珍)

用い方 一様に香辛料ですけれども、蕃椒粉(唐辛子粉)は薬味として煮物、汁物、漬物等によく、辛子粉は料理の加味料として各種の和え物、酢もの、なます等によく、山椒粉は主として薬味といたします。芭蕉の句に「かくさぬど宿は菜汁に蕃椒」とあり、蕃椒粉の大衆的な情趣が眼にうかんでほほえまれます。いま調理による用途別を示すと左の通りです。
 辛子和又は辛子みそ 小松菜、ほうれん草、蓮根、うど、水菜、鶯菜、筍、むき空豆、茄子、ねぎ、小蕪 、数の子、鳥貝、田螺、赤貝、鯉鮒のさしみ、若布。
 辛子酢みそ 各種のさしみ
 水辛子 冷奴豆腐、冷しソーメン、そば、うどん。
 粘辛子 竹輪、里芋、こんにゃく、がんもどき、蛸等のおでん、サンドウィッチ。
 辛子醤油及び辛子ソース 西洋料理の色々、中華料理の色々、ワサビ代用、すし、天ぷら。



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