乾物の知識



寒天

解 説 食用海藻のテングサをはじめエゴ、トリアシ、イギス、オゴノリなどを取混ぜ、これを数時間煮沸して溶液となし、冬期冱寒(ごかん・厳しい寒さ)の夜を利用して凍結乾燥せしめたもの。萬治元年の冬、山城国(やましろのくに)伏見駅美濃屋太郎左衛門という人が偶然に発明したと伝え、当時「心太の乾物」といって珍重し、伏見の名産であったが、現在では大阪、京都、兵庫2府1県と長野、岐阜両県、それに樺太などが産地です。中国では古から寒天の事を、凍瓊脂(とうけいし)又は洋菜(ようさい)といい、いまも山東省あたりで製造しているそうですが、その品質はとても粗悪であって、日本のものとは比較になりません。また近年米国カルフォルニア州でも化学的製造を始めたが、日本のような優良品が出来ず、かつ生産費が非常に高くつくので算盤が持てぬようです。とにかく、寒天は世界に誇るべき日本特有の産物で、その製品の大部分は中国と欧米諸国へ輸出され、世界中を闊歩しています。
 製品には細、角の二種あり、角寒天は主として内地の需要に充て、細寒天(糸寒天ともいう)は細い線状をなし、もっぱら海外へ仕向けています。しかして儀式や精進料理に用いる赤寒天は染料剤で染めたもの、樺太の寒天は熨斗板のように薄い板形に出来ています。品質においては概して関西品は信州品に比し優良であります。

成分及び栄養価 寒天の成分は水分22.80%、蛋白質11.71%、含水炭素62.06%、灰分3.44%で、カロリーは(グラム当り)3.02、(匁当り)11.32です。元来不消化のものだといはれますが、一種の整腸剤で、腸内通過の際柔らかに排泄物を掃除する効果著しく殊に痔疾を有する者が常用すると苦痛を減ずるとされます。また海藻製品なるがゆえに多分のヨードを含み、それを必要とする体質の人に良く、消化力が鈍いために腹耐へ(はらこえ)よく空腹凌ぎの効能もあります。特に夏時の清涼食品としては、全く天下一品でしょう。

◎ゼラチンには栄養価値なし
 ゼリー製造に用いられるゼラチンはコラーゲンなる骨の膠質物を煮沸して可溶性に変化させたもので、類似蛋白質の一種、寒天よりも溶け易く、消化吸収は早いようですが、体質構成上に最も必要なアミノ酸のチロシン、システィン、トリプトファン等を含有していないから、蛋白質としての栄養上の価値は全然無い物だそうです。

◎御飯の腐敗を防ぐ
 梅雨から夏にかけて、ご飯の腐りやすい時、寒天を少量、御飯1升に寒天(1匁ほど)入れて炊きますと、大変長持ちするのみならず、御飯に艶気(つやけ)とネバリがついておいしく頂けます。

用い方 わが国では多く菓子材料や夏向き料理、精進料理に使われます。例えば羊羹、ぜりーなどの料理、菓子の固め、つなぎに必要とされ、中国でも同じ用途ですが、特に「菜燕」(さいえん)と称して、高等料理に出る「燕巣」の代用を努めます。しかし欧米輸出が盛んなると共に、数々の新用途が、開け来たり、医療用、化学用、工業用など相当広い範囲に用いられるようになり、最近米国の1富豪が或る珍奇の花卉(かき・花の咲く草)培養するに寒天を使ったという贅沢な話もございます。ここに寒天料理数種を載せますが、なお調理法については大阪、京都、兵庫2府1県の寒天水産組合(当時大阪市西区)が希望者に対して喜んで指導の求めに応じています。



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