解 説 土地によりヒスキモ、ヒジキモ、ネイリ等の稱呼(しょうこ・呼称)があります、褐藻類に属し、波浪高き海岸の岩石に付着して発生する。本邦では沿海到るところに産しますが、大阪に入荷するものは瀬戸内海と紀州、志摩、伊勢の各地です。製法により粉ヒジキ、長ヒジキの二種あります。
成分及栄養価 約4割の含水炭素(炭水化物)、3割4分の灰分、約1割の蛋白質から成り、やや消化の悪い嫌いを免れないが、それは料理法によりけりです。ヨードその他アルカリ性を多分に含有しているので血管硬化を防ぎ、性病も治すなど和布(わかめ)、荒布(あらめ)と共に若返り的効果があり、また常に用いると歯を丈夫にし頭髪の光沢を良くし、脳病を癒す(なおす)に有効です。また石灰分を多量に含んでいるから妊婦が食べると胎児の骨の発育によいそうです。兎に角、鹿角菜は頗る滋養に富んだものであり市価が低廉なために昔から経済料理の材料として歓迎されます。
用い方 油揚豆腐や大豆などと煮合せるのが普通で、醤油砂糖で味付したものを魚類に添えることあり、ヒジキの酢味噌あえ、辛子あえなども整理上有効でしょう。
調 理 例
1、煮 付
調理法 粉ひじき大匙10杯を暫く水に浸けてふやかし、軟らかになったららば水を替えて綺麗に洗い、熱湯に入れて暫く煮、油揚2枚を竪2つ割として更に小口から一分位に切って加え、一沸り(ひとたぎり)してから笊(ざる)にとって水を斬っておく。
鍋に煮出汁を5勺、砂糖大匙1杯を入れて火にかけ、沸立ったらば前の材料を加えて2~3分間煮更に醤油2勺を加え、掻きまわしながらとろ火で味のつくまで煮込み、器に盛り分けます。
注意 鹿角菜は煮ると非常に殖えるものであるから材料は少なめに採るがよい。 2、ひしきのぬた
調理法 大匙3杯のひじきを暫く水に浸し、軟らかになったらば熱湯に入れてザッと茹で、笊に揚げて水気を切っておく。生節二切分は大切りのまま熱湯に浸して直ちに取り出し、手で小さくほぐし、白味噌30匁(112,5g)を擂鉢ですりつぶし、砂糖大匙半杯、酢3勺をまぜて摺りのばして裏漉しにかけ、前のひじきと生節とを加えてよく和える。
3、飛 龍 頭
調理法 大匙3杯の鹿角菜を水に浸し、軟らかくなったらザッと茹で、笊(ざる)に上げ水気を切って置く。豆腐二丁を布巾に包んで軽く壓して(おして)水気を搾り、擂鉢に入れてよく擂り潰し、極少量の食塩と卵一個を割り入れて尚よくすりまぜた中に前の鹿角菜を加えて全体をよく掻きまぜ、それを15個に分けて、一個づつ丸く平らに形を作り、煮立った油に入れて狐色になるまで揚げ、新聞紙の上に取り出して油気を切り、笊に入れて上から熱湯を注けて(かけて)油を脱きます(ぬきます)。別に煮出汁1合、酒3勺、砂糖大匙1杯、醤油3勺を合わせて煮立てて前の揚げ物を入れとろ火で汁のなくなるまで煮込む。この材料の形を小さく作って揚げたものは吸もの種や旨煮にもちいます。
4、鹿角菜寄せ
調理法 ひじきは細いのが良い、水に浸してから鍋に入れ、鹿角菜の量のかさぶる以上の水を入れて茹でる、茹で上がったら水に放して再々水を替えて灰汁を抜き、笊に取って水気を断ち、鍋に移して煮出汁、味醂、醤油にて煮上げ、笊に取って汁を捨てる。ひじきは冷ましておく。次は蒲鉾を作る魚のすり身に塩少し入れ、葛粉を少量加えて擂鉢で摺り、鹿角菜と混ぜ合わせ蒸篭(せいろ)に布(濡らして軽く絞ったもの)を敷き、材料を摘みならべて10分間ほど蒸して共する。
注意 鹿角菜を煮上げるとき、少量の胡麻油を入れて煮上げると味は格別よくなる(大石文久氏)